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新規事業を立ち上げる際の助成金や補助金とは?活用メリットや注意点について解説
企業が新規事業の立ち上げを試みる際に心強い味方となる「助成金」と「補助金」。立ち上げの成功率を高めるためにもぜひ活用したい制度ですが、両者を混同していたり、自社とは縁遠いものと見なしていたりする方も多いのではないでしょうか?
この記事では、新規事業の立ち上げにおいて助成金と補助金が必要な理由や、受給することで得られるメリットなどをご紹介します。両者の違いや具体的に申し込みたい制度、注意点も確認していきましょう。
1.新規事業の立ち上げには助成金や補助金の活用が必須?
助成金・補助金いずれも、主に国や地方自治体が支給する返済不要な資金です。受給には個別の要件があり、事業計画書などを提出して審査を通過する必要があります。
新規事業を立ち上げるには、まとまった資金が欠かせません。店舗・設備などの初期投資費用はもちろん、事業が軌道に乗るまでのランニングコストの確保も必要不可欠です。資金の余裕は、新規事業の撤退リスク低減に直結します。助成金や補助金の適切な活用は、新規事業開発の成功率を高めるための重要な要素です。
2.助成金と補助金の違い
助成金と補助金は同一視されがちですが、厳密には以下のとおり特徴が異なります。
●助成金
要件を満たせばすべての事業者が受給できる可能性が高い
●補助金
全体の採択件数や予算が明確で、要件を満たしても受け取れないケースがある
(例:全100件採択予定の補助金に200社が応募し、100社は必ず落ちるなど)
補助金は受給のハードルが高い代わりに受け取れる金額が高額である傾向にあります。助成金を手堅く押さえつつ補助金にも申し込むなど、両者の違いを理解した動きが大切です。
3.新規事業に活用できる助成金や補助金の種類
では、新規事業に活用できる具体的な助成金や補助金を見ていきましょう。
3-1.事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響で売り上げが減少し、新しい分野への業態転換や新規事業の開発などを目指す事業者向けの補助金です。
建物費や専門家経費など「事業拡大への投資を含む経費」が対象となり、応募枠ごとに1/3~3/4の補助率で資金を受け取れます。
最大補助金額は従業員数によって変動しますが、数千万円~1.5億円のような高額な補助も受けられるのがメリットです。
3.2.IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際に役立つ補助金です。
「通常枠」や「セキュリティ推進対策枠」など全4種類の申請枠があり、それぞれ要件や補助金額が異なります。スキャナーやプリンターといったハードウェアの購入から、ソフトウェアやクラウドツールの使用料などのデジタル料金まで、補助対象が幅広いのが魅力です。
3-3.ものづくり補助金
ものづくり補助金(正式名称「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」)は、生産性の向上を目指して試作品の開発や新規サービスの構築を行うための補助金です。
設備投資の費用が補助対象となり、補助率は中小事業者で1/2、小規模事業者で2/3が補助されます。業種や業態の制限が少ないことから人気が高く、例年30%~40%ほどの採択率を維持しています。補助金額が100万円~1,000万円と高額なのも注目される理由でしょう。
3-4.小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、従業員数が20名以下のような小さな事業者が自社の持続的な経営のために販路拡大や生産性向上を目指す場合の補助金です。
Webサイトの構築費や店舗改装の外注費、試作品の開発費など、販路拡大につながる経費が補助対象となります。通常の補助率は2/3で、上限額は50万円~200万円です。小規模事業者の救済を念頭に置いた制度であるため、大手企業がライバルとならないのがうれしいポイントです。
3-5.キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者(派遣、パート、有期雇用など)の待遇を企業内で改善すること(例:正社員化や賃金の上昇)に対して支給される助成金です。
ハローワークや労働局へ計画書を提出し、実際に待遇を改善して6ヵ月間給料を支払った後、支給申請を行うことができます。新規事業に関連して、既存の非正規労働者を正社員として採用する場合などに役立つでしょう。
支給金額は、たとえば有期雇用者を正社員にした場合で「一人当たり57万円」と高額です。生産性が向上している、対象者がシングルマザー・シングルファーザーであるといった要件を満たすことでさらに金額は増加します。
3-6.事業承継補助金
事業承継補助金は、事業承継(再編や統合も含む)をきっかけに新規事業の立ち上げや経営革新を目指す事業者向けの補助金で、「経営革新」「専門家活用」「廃業・再チャレンジ」の3種類に分かれています。
新規事業においては主に、経営者の交代やM&A、廃業予定の相手から設備・従業員・顧客を受け継ぐ形での創業における「経営革新」として申請する形になるでしょう。新規事業に関連するものなら、人件費やマーケティング調査費など広範な費用が補助対象となるのがメリットです。補助率は1/2以内で、100万円~500万円を目安に支給されます。
3-7.創業助成金
創業助成金は、東京都中小企業振興公社が行う都内での創業を支援する助成金です。都内での創業を予定中(もしくは創業から5年以内の中小事業者)で、「東京都制度融資(創業)利用者」など一定の条件を満たす事業者が対象となります。
物件の賃借料や広告費、従業員の人件費まで補助対象となり、補助率も2/3以内と比較的高めです。助成金額は100万円~300万円となっており、都内での新規事業を考えているのであれば、ぜひ活用してみましょう。
4.助成金や補助金を活用するメリット
さまざまな種類があり新規事業の役に立つ助成金と補助金ですが、ここでは助成金や補助金を新規事業に活用するメリットをあらためてご紹介します。
4-1.返済をする必要がない
助成金と補助金の最大のメリットともいえるのが、通常は「※返済の必要がないこと」です。
銀行融資などの借り入れによる資金の確保では、利息を含む返済が企業に重くのしかかります。しかし、助成金や補助金は純粋な資金獲得です。無事に受給できれば、企業にはプラスの影響のみが残ります。
※要件に違反した場合などは例外的に返済を求められるケースもあります。
4.2.適用範囲が広いものもある
前述したIT導入補助金のように、補助金や助成金の中には申し込める事業者や補助対象となる経費の範囲が広い制度もあります。
「一部の限られた企業が受けられる支援」と考えてしまっては損です。このような制度を知っているかどうかで、資金面の余裕に大きな差が生まれます。
4.3.種類によっては支給額が大きいものもある
助成金・補助金の中には、支給金額が高額な制度もあります。たとえば、前述の事業再構築補助金は数千万円~1.5億円といった莫大な金額を受け取れることもあります。
助成金や補助金の審査を通過するためには相応の手間が掛かりますが、このように高額な資金を受給できれば十分に元が取れるといえるでしょう。
4.4.事業や計画の見直しができる
助成金や補助金の申請を進める中で、既存・新規どちらの事業においても構造や現状が見直せる点もメリットです。
助成金や補助金の審査には事業計画書などの提出が必要です。書類のブラッシュアップを繰り返す過程で自社ビジネスの問題点を洗い出せれば、より理想的、具体的な事業の展開が見えてくることもあるでしょう。
4-5.受給実績が増えることで信頼性が高まる
助成金や補助金が受給できるということは、「国や地方自治体などが行う厳格な審査に合格できるほど高度な水準でビジネスを行っている」ことが証明されることと同義です。
受給実績が増えるほど企業の信頼性は高まり、資金調達や取引先の確保でも優位に働きます。キャリアアップ助成金のような労働環境にまつわる資金の場合では、社員のモチベーションアップや求職者からの好印象にも寄与するでしょう。
5.新規事業の助成金や補助金を活用するときの注意点
続いて、新規事業に助成金や補助金を活用する際の注意点も見ていきましょう。
5-1.募集期限や募集要項を必ず確認しておく
応募予定の助成金・補助金の募集期限と要項は必ず確認しておきましょう。特に要項には、どのような事業者が受給できるのか、補助対象となる経費、上限額、審査通過後の流れに至るまで詳しく解説されています。確認が甘いと審査に通過できなかったり、最悪の場合は不正受給扱いになる可能性もあります。
5.2.助成金・補助金が必ず受けられるとは限らない
特に補助金は、要項を満たせば必ず受けられるものではありません。応募件数や予算次第では自社が対象とならないケースもあります。一つの助成金や補助金の審査に落ちても新規事業立ち上げに差し障りが出ないよう、並行して複数の制度を調べておきましょう。
5.3.自己資金はある程度貯めておく必要がある
補助金や支援金だけをあてにせず、できるだけ自己資金を準備することも必要です。多くの補助金や支援金は「対象経費の1/2」のように所定の補助率に基づいて支給されます。まったく自己資金のない状態からでは新規事業の立ち上げは困難です。
5.4.手続きが複雑で受給までに時間がかかる可能性がある
助成金や補助金の申請は複雑で時間が掛かり、審査に通過するにも相応の期間が必要とされます。さらに、入金されるタイミングは経費の支払い後に領収書などを提出した後が一般的です。
助成金も補助金も、即時性を重視した資金調達には向いていません。資金が足りない場合はひとまず銀行などから借り入れを行い、助成金や補助金の入金を待つ形が解決策として考えられます。
6.新規事業を立ち上げるにはポイントを押さえておくことが大事
新規事業の立ち上げでは、助成金や補助金制度の調査と同時に以下のポイントを押さえておくことが求められます。
- 軸となるコンセプトを決める
- 顧客の需要(課題)を把握する
- 参入する市場の規模と将来性の調査
- 新規サービスに必要な環境を把握する
- 撤退する基準を決めておく
上記を理解しておくことで魅力的な事業計画書の作成につながり、ひいては助成金や補助金の獲得にも役立ちます。
新規事業立ち上げを成功させるためには以下の記事も参考にしてみてください。
7. 新規事業の立ち上げはプロに相談するのがおすすめ
ここまでご紹介した通り、新規事業を立ち上げる際はさまざまな助成金や補助金を活用できます。しかし、自社内で対象事業者や補助対象の経費を把握し複雑な申し込み手続きを完遂するのは大変です。
もし、補助金や助成金のほかに新規事業立ち上げにまつわる不安があるのなら、外部顧問の力を借りてみませんか? 人材マッチングサービス「マイナビ顧問」では、新規事業に関する高度な知見を持つプロフェッショナル人材をご提案します。
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8.まとめ
この記事では、新規事業の立ち上げに関連する助成金や補助金について、受給が勧められる理由や具体例、活用メリットや注意点をご紹介しました。
助成金と補助金を活用して資金面に十分な余裕ができれば、新規事業立ち上げの成功がよりクリアに見えてきます。申し込み書類の作成や応募する助成金・補助金の選定には、マイナビ顧問の活用もぜひご検討ください。