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【最新版】AIの仕組みや活用事例を紹介−企業での導入・活用ポイントについても解説
企業のDX活動が推進される中、「AI」という言葉を耳にする機会も増えました。すでにAIの活用は始まっており、身近なところからビジネスの現場に至るまで、さまざまな分野で導入されています。
しかし「AIの活用方法の前に、そもそもAIの仕組みも何ができるのかもわからない」という方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、AIの基礎知識をはじめ、メリットや活用事例、企業が導入にあたって意識すべきポイントまで幅広くご紹介します。
1.AIとは?仕組みや違いについて
AIとは「Artificial Intelligence」の略称です。日本語では「人工知能(人工的に作られた知能)」を指しますが、実はAIにはいまだ一意的な定義はありません。
AIの定義は研究者によって主張が異なり、1950年代の研究初期からいまに至るまで論じられ続けています。知能を持つメカを指す研究者もいれば、人間のような知能をつくる技術までを含めてAIと定義している研究者もいます。
1-1.AIの仕組み
定義そのものに揺らぎがある中で、一般的なAIに共通して見られるのが以下の仕組みです。
- データを読み込んで学習する
- 推論して最適解を導き出す
「学習」と「推論」、この2つのキーワードがAIを理解する手助けとなります。
●データを読み込んで学習する
AIにおける学習とは「情報から将来使えそうな知識を見つけること」を意味します。人間が過去の多くの経験から学びを得るのと同様の仕組みで、AIも膨大なデータを読み込み、将来に向けた知識を備えます。データの効率的な読み込みには、機械学習と呼ばれる方法を採用するケースが主流です。
●推論して最適解を導き出す
一方、AI分野における推論とは、学習で備えた「知識をもとに、新しい結論を得ること」を指します。新たに入力された情報に対して、これまでにAIが学習で理解したパターン(学習済みモデル)をもとに識別することで最適解を導き出す仕組みです。この学習と推論の組み合わせがAI活用の根幹を担っています。
1-2.機械学習との違い
AIと同一視されがちな概念に機械学習があります。機械学習はAIの手法の一つで、「人間の学習に相当する仕組みをコンピューター等で実現するもの」と定義されています。人力では処理できないほどのビッグデータをAIに与え、効率的に学習済みモデルを構築していく方法です。「AI=機械学習」と語られるケースも散見されますが、あくまでもAIの手法の一つに該当します。
1-3.ディープラーニングとの違い
AIの一部である機械学習の、そのさらに手法の一つが「ディープラーニング(深層学習)」です。つまり、AI>機械学習>ディープラーニングと関係します。
ディープラーニングはニューラルネットワーク(無数の神経細胞で構成されている人間の脳のように、複雑に結合して情報処理を行う仕組み)をベースにしています。最大の特徴は、AI自身が「特徴量(学習において何に注目すべきか)」について判断を下せる点です。
従来の学習方法では、人間がAIに学びの指向性を伝えてあげる必要がありました。しかし、デュープラーニングではAIが重要ポイントを自ら発見し学習していきます。シンギュラリティへの到達を夢物語ではなくした、現在のAIブームの火付け役となる発明です。
2.AIを活用することのメリット
「学習」と「推論」をこなせるAIの活用は、現代のビジネスにおいても重要課題です。AIの活用は、企業に以下のようなメリットをもたらします。
●生産性・作業効率の向上
→ミスのない単純作業や定型作業の実現
●安全性の向上
→労災の96%以上を占めるともいわれる「不安全行動」が発生しない
●顧客や従業員の満足度の向上
→データに基づいた顧客ニーズの把握、単純作業の代替による従業員の余裕の確保
こうしたメリットを享受すべく、すでに多くの企業が率先してAIを取り入れています。
3. AIができることは?身近な3つの例を紹介
しかし、AIは定義があいまいで、具体的にどのようなことができるのかもイメージしにくいのが現状です。ここでは、身近で役立つAIができることを3つご紹介します。
- 画像認識
- 自然言語処理
- 音声認識
3-1.画像認識
画像認識は、AI技術のなかでも特に活用が進んでいる技術です。メジャーなものとしては「異常検知」が挙げられ、現在の画像と事前の学習で得た知識を比較し、正常・異常の状態を速やかに判断します。本来であれば人間が行っていた点検作業の効率化が可能です。そのほかにも、画像認識によって文字をデータ化する「AI-OCR技術」というものもあり、時間のかかる事務作業の迅速化にも役立ちます。
3-2.自然言語処理
自然言語処理は、人間が日常使っている言葉をAIに理解させ、言語を機械で処理することです。普段の生活での話し言葉や、文章などの意味を解析していきます。 たとえば、チャット形式で対話をする「チャットボット」は、ECサイトや企業のサイトにも多数採用されています。また、文章・単語を入力するだけでほかの言語に変換してくれる自動翻訳も、自然言語処理の一つです。
3-3.音声認識
音声認識は人間が話した言葉をAIが認識し、文章にする技術です。企業活動や日常生活まで幅広く活用されており、以下は一例です。
- 会議や講演会などの音声を録音してテキスト化する「議事録作成」
- わからない言語を同時に通訳することで言葉の壁を低くしてくれる「同時通訳」
一説によれば、音声認識による文字入力の速度はキーボードタイピングの2倍~4倍ともいわれています。導入により、生産性や業務効率向上が期待できるでしょう。
4.身近なAIの活用事例
続いて、AIができることを実際に活用している4つの身近な事例を見ていきましょう。
- 自動運転技術
- 交通量の計測・調査
- お掃除ロボット
- 音声アシスタント
4-1.自動運転技術
自動運転とはドライバー自身が操作を行うことなく、自動車が自動で判断し走行する技術です。日本では0〜5までの6段階で自動化レベルを定義しており、0〜2レベルでは人間を主体とし、3〜5レベルではシステムが主体となっています。 実用化されているのは自動化レベル2で、車間距離を一定に保ち、車線を判断して動くといったものです。現在はまだまだ改善が必要なものの、将来的な自動運転技術の発展により、以下の効果を期待できると考えられています。
- 交通事故の減少
- 渋滞の緩和
- 二酸化炭素の削減
4-2.交通量の計測・調査
国土交通省は2021年から、道路の交通量計測・調査業務の手法を人力作業からAIを活用した手法に変更しました。国道に設置されている路上カメラの映像をAIに認識させ、車両台数を自動的に測定する仕組みです。人の手を介した従来の交通量調査では人件費が膨らむうえに、スタッフごとにデータの精度のばらつきが大きい点が指摘されていました。人為的なミスの生まれないAIの活用により、より安価に高精度なデータを入手できると期待されています。
4.3.お掃除ロボット
一般家庭にも普及しつつあるお掃除ロボットは、内蔵されているセンサーにより障害物や段差を避け、自動で掃除を行っています。AIによる画像認識が活用されている事例です。 また、家具の配置や部屋の間取りなどをデータとして学習することで、何度も同じところを掃除する非効率を避けています。さらに掃除が終われば、自ら充電器のある位置まで戻るなど、小さなボディに高度な知能が詰め込まれています。
4-4.音声アシスタント
音声アシスタントは、人間の声を認識して起動する音声認識技術や、自然言語処理などのAI分野が採用されています。身近なところではスマートフォンに搭載されている、AppleのSiriや、AndroidのGoogleアシスタントなどが有名です。 ユーザーの話す言葉を理解することで、その指示に対して適切な処理を行います。たとえば、対話や検索、音楽再生や天気予報の確認も声だけで操作できます。
5.ビジネスでのAIの活用事例
ここからは、ビジネス分野でのAIの活用事例について以下の業界別にご紹介します。
- 医療業界
- 物流業界
- 農林業界
- 金融業界
- 建設業界
- 小売業界
5-1.医療業界
●画像診断
医療現場ではレントゲンやCTスキャンなどさまざまな画像から病気の診断を行いますが、これらをAIに学習させる取り組みが行われています。もちろん、最終診断を下すのは医師です。しかし、AIによる画像診断の導入は、診断ミスの低減のみならず、医師の作業負担の減少=医師不足の解消にも寄与します。
●AIによる問診
従来の紙による問診の代わりに、スマートフォンやタブレットから手軽に返答できるAI問診も登場しています。患者の入力内容をもとにAIが自動でふさわしい質問を表示し、医師による症状の把握を手助けするサービスです。自宅での事前問診も可能となるなど、Withコロナ時代にふさわしい試みとして注目が集まっています。
5-2.物流業界
●発注・在庫管理の最適化
物流業界では、AIが発注・在庫管理の最適化に活用されています。従来、在庫や発注量は従業員の経験や知識によって管理していました。しかしAIの活用により、過去の売上や需要の変化、顧客属性などをすべてデータ化して分析できるようになりました。需要予測が正確になり、無駄な在庫の大幅な削減を実現しています。
●配送ルートの最適化
近頃は配送ルートの選定にもAIが活用されています。どの道を通って、どの目的地に、どの順番で届ければ良いのかをAIが自動で分析してくれる試みです。運転手が経験から配送ルートを選定する場合と異なり、新人ドライバーも含めたすべてのスタッフが効率的に運搬できます。特定の人物がいないと業務が成り立たない状態、いわゆる「業務の属人化」を防げると好評です。
5-3.農林業界
●仕分けの自動化
農林業では、野菜などの等級を画像認識で判別する「仕分けの自動化」にAIが活用されています。事前に各等級の画像データをAIに学習させておくことで収穫物の長さや大きさなどを自動解析し、出荷の可否を判別します。いまはまだ最終的に人間が判断することもありますが、AIの特性上、画像データが増えれば増えるほど仕分けの精度も上がります。将来的には完全な自動化の実現も夢ではありません。
●収穫時期の予測
どの時期に作物を収穫すればベストな収穫量を期待できるのか、将来の高精度な予測にもAIは活用されています。もともと農作物は、実際に収穫してみるまで成果を推測しにくく、農家の勘や経験頼りになるケースも珍しくありませんが、AIにより数値に基づいた予測を立てることで、収穫量の最大化はもちろん、収穫に必要なスタッフや出荷先の事前確保も実現できます。
5-4.金融業界
●クレジットカードの不正利用検知
多くのクレジットカード会社では不正利用の検知にAIによる監視システムを採用しています。不正利用のパターンを事前に学習させることで、人の手によるチェックよりも速やかに異常を察知します。被害が拡大する前にカード会社からユーザーに確認することで、不正利用の損害を最小限に食い止めます。
●投資のアドバイザー
AIが株式や債券などの個人投資にアドバイスをしてくれるサービスも登場しています。気になる投資先の買い時や売り時を過去データから予測し、情報提供してくれる仕組みです。保有銘柄のバランスから次に購入すべき銘柄を教えてくれるなど、投資のリスクが最小限になるよう工夫されています。
5-5.建設業界
●点検の自動化
建設業では点検の自動化にAIを活用しています。建設物の点検は、いままでは熟練された技術を持った職人の目視による劣化状況の調査が必須だったため、多くのコストや手間がかかっていました。しかし、AIの画像認識を活用することで異常をシステマチックに検知できます。いまでは熟練の職人とも遜色のないレベルで自動判別できるそうです。
●危機の予知
建築現場では、「危険予知活動」と呼ばれる、その作業で発生しうるトラブルの事前検討を作業前に行います。検討では、過去の災害データをできるだけ読み解くことが求められますが、これはまさにAIが得意とする分野です。すでに一部の現場では、人力では扱いきれないほど膨大なデータからAIが将来の危険を予知し、労災を防いでいます。
5-6.小売業界
●フリーマーケットのAI出品
フリーマーケットアプリにおける出品作業の簡易化にもAIは取り入れられています。ある大手アプリでは、スマートフォンのカメラを使って出品したいアイテムを撮影すると、AIが画像認識で商品名・ジャンル・概要などを自動入力してくれるサービスの提供を開始しました。一部のジャンルでは販売予想価格まで自動で算出、推奨してくれます。
●顧客の行動分析
小売店では、自社店舗内の顧客の行動分析にAIを活用する動きが見られます。店舗内に設置されている監視カメラから画像認識により顧客を調査。時間帯や曜日ごとの客層、顧客の入店から退店までの導線、手に取ったが購入しなかった商品の特定など、従来では不可能だった精緻なマーケティングデータを収集できます。
6.AI活用で今後の仕事はどう変化してくるのか
ここまでご紹介したとおり、AIはすでに多くの業界でビジネスに取り入れられています。最近では「いつかAIに人の職が奪われてしまう」とする意見もありますが、今後、私たちの仕事はどのように変化するのでしょうか?
以下は、AIの進化により消滅する可能性が高いとされている職業の一例です。
- 警備員
- タクシー運転手
- 一般事務
- 銀行員
- 鉄道運転手
自動運転、24時間警備、数値計算、書類作成といった業務をAIが安価にこなす時代が来れば、私たちの働き方にも変化が起こります。「AIが実行した業務」を活用したり、その成果を評価したりと、AIと共存する働き方が必要な時代が近づいているのかもしれません。
AIが進化する中で「なくなる仕事」や「残る仕事」については、以下の記事でも詳しく解説しています。
7.企業でAIを導入・活用するためのポイント
企業がAIを導入・活用するにあたっては、少なくとも以下のポイントを押さえておく必要があります。
- 課題や目的の明確化
- インフラ・ネットワークの環境整備
- IT人材の確保・育成
- セキュリティの管理・対策
AIは画期的な発明ですが、上記を理解しないまま使用しても望む効果は得られません。「なぜAIを導入したいのか」を明らかにしたうえで設備や人材の確保といった具体策を検討していくことが大切です。
8.まとめ
AIの活用はすでにはじまっており、人手不足の解消やコスト削減など企業に大きな恩恵を与えてくれます。 しかし、AIの導入には上述のポイントを理解する必要があり、なおかつ実践直後から目に見える成果が出るとは限りません。業務で利用できるレベルまで自社内でAIを育てていく手間も求められ、このようなAIの育成ができる専門人材の需要は高まり続けています。
もし、自社のみでのAI人材の確保が難しいのであれば、マイナビ顧問の活用もご検討ください。AIにまつわるノウハウと豊富な人脈を持ち合わせた、課題解決のプロフェッショナルを貴社にご紹介します。