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会社の成長と組織のひずみ、どう対処する?
事業が拡大すると組織が悲鳴をあげる?!
事業が拡大することは、企業にとっても社員にとっても本来、喜ばしいことです。ところがそれにともなって組織が大きくなると、多くの企業が従来からのマネジメントや管理がうまくいかなくなる局面を経験します。いわゆる「組織のひずみ」です。成長ステージや事業展開の仕方によって、対処するための対策がある程度ありますので、実例をもとにそのパターンを知っておくと、役に立つでしょう。
「急成長」と「事業モデル・領域転換」が気を付けるポイント
それでは具体的な事例を通して「ひずみの現れ方」と「その対処方法」をみていきましょう。
A社:30人規模~5年で200人規模に急拡大したIT企業の場合
とある会社のITソリューション事業を、別のホールディングス企業が買収してスタートしたA社。経営陣が入れ替わっただけでなく、時流もあって受託事業が急成長しました。それにともない組織の人数も急激に増えていき、30人だった組織が5年で200人近くまでになりました。
以前は、営業出身でリーダーシップに長けている社長がなんとか全員を見渡して組織をひっぱっていたのですが、100人手前くらいから、直接指導したり声かけしたりすることが難しくなっていきました。当然、中間管理職をたて、小さい単位に分けてマネジメントさせていきますが、それまで事業を成長させることに一所懸命だったため、中間管理職のマネジメント力が開発できていませんでした。そのため不測のトラブルが勃発し、結果的に事業成長が鈍化するという状況に陥りました。
この状況を受けて、社長は外部コンサルタントと一緒に以下の施策を打つことにし、現在、次の事業ステージに向けて組織を立て直し中です。
- 会社のジャッジスタンスを明確にするためにクレド(信条)
- そのクレドに沿った人物を採用していくための採用基準を策定
- リーダーやマネージャーのマネジメント能力開発のための研修を実施
B社:「単一事業で20年」から複数事業へのトランスフォーメーションをしかけている3,000人規模の上場企業の場合
創業して約20年、店舗展開を伴うサービス事業で3,000人2,500億円の企業に成長した上場企業のB社。IT革命の波がダイレクトに影響する業界であり、いままでの事業だけでは今後厳しくなると判断した経営陣は、近似領域でコアとなるような新規事業の立ち上げに踏みきります。事業自体はそれなりにスムーズにいくつか立ち上がったのですが、いままでのビジネスで必要だった能力とは別の能力が必要な事業のため、携わる人材の質を変化させていかねばなりません。いままではどちらかといえば体育会系で泥くさく地道に頑張りきれるタイプを採用し、評価してきましたが、これからの事業領域ですと、よりITリテラシーと事業視座の高い人材が必要となります。
そこで現在経営陣は以下の施策を実行して、さらなる飛躍のための準備を進めています。
- 風土改革、評価制度改革、育成改革
- 新卒採用の基準変更とキャリアパスの変更(数百人採用する新卒全員を営業現場配属にしていたが、本部配属もスタート)
- 組織のガバナンス強化(会議の精査やジャッジボードの明確化など)
C社:ブランド数・商品点数を急拡大させた1,000人規模のメーカー企業の場合
ファブレスメーカーとして2つの領域に絞って商品展開をしてきたC社。ヒット商品が生まれ、販売チャネルの拡大やグローバル展開にも着手し、現在上場も視野に入れて急拡大中です。
C社は首都圏ではない地域に本社を持つ企業であり、社員は地元出身のプロパー社員を中心とし、給与水準も首都圏より抑えた体系になっていました。ここ数年の急拡大に伴い、さまざまな専門的知見を備えた即戦力を採用したいと思ったときに、勤務地と給与の問題があり、なかなか口説くのも難しいなか、以下の施策を実行中です。
- 東京拠点を拡大し、業務内容や職種によっては東京勤務も
- 特に専門性の高さを必要とする部署では、コンサル契約や業務委託契約などフレキシブルな選択肢を用意。年齢もシニアクラス歓迎
- いままで大事にしてきた社員の一体感を維持すべく、より理念を前面に出した経営スタイルを遂行
正解がないぶん、多様な経験知が有効
前述のように、成長には必ずつきまとう「組織のひずみ」。対処の方向性にパターンはあっても、どう具体的に対処するかに正解はありません。そこで有効なのは、「こういうケースにこう対処したらうまくいった、あるいは効果がなかった」といった経験知です。これを多く持っている代表格はコンサルタントですが、実際にその渦中に身を置いたり、対処したりした経験のある方を顧問として採用し、知恵を拝借するのも有効な方法といえます。