- 経営課題
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社外取締役、どんな人が適任?
社外取締役に求められていること
2015年の会社法改正により、コーポレートガバナンスの観点から社外取締役を設置し、取締役会を監督していく機能の強化が急務とされてきています。その実際の期待値としては、経営そのものに豊富な経験を持っている外部の人間が経営をチェックすることで、議論の活性化や経営の透明化がなされることであり、特に、現在の経営メンバーが未知の領域について知見を持っている人材を要請してアドバイスをもらう、という位置づけが、色濃く出ているようです。
ある大手店舗チェーンのケースを紹介します。いくつかの業態で展開をしていた同社でしたが、いずれも大規模店舗でのチェーン展開ばかりでした。新規事業として、お客様の滞在時間も短く、小規模店舗による展開をする業態の飲食チェーンを検討していた時に、その知見のある人材が社内にいないため、事業推進に苦戦していました。
そこで、飲食業界ではない業界でしたが、小規模店舗で短期間に店舗を増やして、1号店オープンから約5年で100店舗まで成長させた実績を持つ経営経験者を社外取締役として迎えました。その方の経験から来るアドバイスを取り入れ、その飲食店チェーンは、1年強で100店舗達成という結果を残すことができました。
有効に機能するには難しい側面も
前段のように、もともと経営側の受け入れ体制が整っており、期待値も明確であるところへ迎えられた社外取締役が有効に機能するケースはよくありますが、ガバナンス強化のために、まずは形式的に社外取締役を設置しようというケースだと、なかなかうまくいかないことも多いようです。
あるHR系サービスの役員経験者が、ゲーム会社の社外取締役を引き受け、就任間もない経営会議で新規事業についてアイディアを出しました。しかしながら経営陣はそこまでの意見を期待していたわけではなかったこともあり、その案に対して消極的な判断をした結果、しばらくして競合が類似サービスをローンチしてしまった、という例がありました。
このように、社外取締役が経営会議などで意見を言うだけになってしまい、それをうまく経営判断に生かそうとする経営陣の準備がないというケースは少なくないようです。
どんな人がなるべきか?
では、どういう人が社外取締役になれば、有効に機能するのでしょうか?もちろん、弁護士・会計士・コンサルタント出身者・大手企業の元役員などというバックグラウンドや経験、専門的知識も大切ですが、それ以上に現役員との人間関係や、人柄なども重要であると考えられます。例えば、役員が全員創業メンバー、かつ友人関係にある場合などは、経営会議で真正面からの反対意見はなかなか出にくいため、その辺りをまったく関係のない社外取締役が役割として担うケースもあります。若い経営陣が多い場合に、経験豊富な年上の人材を社外取締役として置き、社長の上司的存在としてアドバイスをもらっているということもあります。さらには、ご意見番のみでとどまらないよう、自分の意見がどう経営陣の胸を打つかを考えながら話ができるような人柄の方が向いている、とも言えます。
ある大手上場企業のケースですが、30代の創業社長が比較的ワンマン体制で、若いメンバーと急ピッチに事業展開をしてきたのですが、大きな判断ミスをしてしまい経営危機に陥ってしまいました。その時に「当たり前の戦略を当たり前に実行してきた」人が社内にいないと気づき、社外取締役として、そのような立場の人を置きたい、と相談がありました。そこで、大手メーカーで社長経験のある、50代で非常にバランス感覚の良いタイプの方をお引き合わせしたところ、創業社長が大変その方を信頼するに至り、アドバイスに耳を傾けながら事業を進め、結果的に経営はV字回復した、というケースがありました。
このように社外取締役の起用については、形式的な設置ではなく、その企業で何が課題で、どんな役割を社外取締役に期待して任せるかを明確にした上で依頼をすることが、有効に機能するためのキーになると言えるでしょう。