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革新性(イノベーション)と創造性(クリエーション)の違い

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必要性は理解していても変化を起こせない

経済は成長ペースが鈍化し、先進国は低成長を続け、新興国においてもそのスピードが減速しています。マクロで見れば中国経済の停滞が新興国と資源国の経済に影響し、それが先進国に波及するリスクや懸念につながっています。国内においては、少子高齢化により、ますます経済が鈍化、あるいは縮小傾向を示しています。それでも多くの企業は1990年前後に構築したビジネスモデルにしがみつき既存のビジネスで生計を立てています。

その一方で、多くの企業は知ってもいます。今のままではいつか立ちゆかなくなる日が来ることを。そのため新規ビジネスの創出とグローバルへの展開をどの企業も唱えています。こう書くと最近の出来事のようですが、実はこの動きは2000年頃より継続的に言われていることです。それなのに、多くの企業は何故イノベーションを実際に起こすことができないのでしょうか?

イノベーションとクリエーションは分けて考える

例えば、上述のような企業では、「あの人は創造性が豊かだ。今度、新規事業を立ち上げる際に、あの人をチームの中核メンバーに入れよう」というような会話がなされています。確かに、新しいアイデアを次から次へと生み出す人材はいますが、時間が経っても一向にそのアイデアは実現されません。むしろ、アイデアがありすぎて、どれを選択すればよいのか悩み、時間ばかりが経過します。このような状況は多くの組織で長く観察されています。そもそもイノベーションとはアイデア出しだけでは終わりません。そのアイデアを実現し成果を出すことが求められるのです。すなわち、アイデアを出す創造性(クリエーション)と実際にイノベーションとして革新を起こす能力は異なるのです。

創造性が豊かな人材は、既存の知と知を足し合わせて、新しい知を生み出します。何らかの知識に対して深掘りすることも得意なのですが、その知識を横にずらして視点を広げていく力も備えています。さらにその知識は普段から緩やかにつながっている多数のネットワークを駆使して仕入れています。

一方、イノベーションとはアイデアを実現し成果を出す力です。創造力があるだけでは実現しません。また、そのアイデアを実現したいという気持ちも強く求められます。新しいアイデアの実行は組織の反対を受けて思うようにいかないからです。既存の組織は、これまでの行動を変えたがらず、新しい考え方に反発する傾向があります。そのためにアイデアを実現する情熱に加え、組織内部の人脈に精通した強い政治力も必要になるのです。

トップとしてイノベーションで成果を挙げさせるためには

では、どうやってアイデアを実現に結び付けていけばよいのでしょうか。ヒントは、人材の組み合わせにあります。自分のアイデアを実現させたい創造性豊かな社員と、社内に人脈を持ち、政治的な権限を有した根回し上手な古参の社員をセットにして取り組むのです。当然、新規の事業は既存のビジネスと同じ尺度で評価してはいけません。従ってトップの権限で、トップ直属の組織下に新規事業の立ち上げ部門を配し、イノベーションの後押しを行います。そうすることによって少なくとも、アイデアが出たけど実現はね...、というような流れに手を打つことができるようになるのです。

企業においてイノベーションを起こすことは必須です。この組織はアイデアを出す力が不足しているのか、アイデアを実現する仕組みが不足しているのか把握し、必要な人材を補うことは経営陣の重要な役割といえるでしょう。





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【著者】
早嶋聡史(株式会社ビズ・&ナビ&カンパニー代表取締役社長)

経営者のモヤモヤをスッキリするコンサルティング会社の代表。コンサル事業では売上規模で100億円前後のオーナー社長や経営陣に対して戦略立案の支援、問題解決の支援、計画実行の支援を提供。研修事業では上場企業の管理職に対してマネジメント、戦略立案、問題解決のワークショップを提供。M&A事業では小規模M&Aに特化したM&Aアドバイザリー業務の提供。ボンド大学MBA。一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事。

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