大手電機メーカー・パイオニア株式会社で、エンジニアの専門分野を歩んでこられましたが、ある時、発想の転換とともに「異業種とのコラボーションによる経営革新」という構想に辿り着きます。顧客、社会が幸せになれる顧客価値を創造しなければならないのに、機能&性能のモノ発想に追われ、効能という本筋を見失いがちな「専門分野一途の危険性」に気づき、積極的に異業種とWIN-WINとなる新しいライフスタイルを提案することで数々のヒット商品を生み出しました。100社以上とのコラボを行い、異能ぶりを発揮。「ミスター・アライアンス」と呼ばれることも。2013年、パイオニアを早期退職し、自らを代表に「新価値創造研究所」を立ち上げ、様々な企業に「顧客価値創造による経営革新」を促しております。業績不振からの脱却、異業種と交わることで社内活性化を狙う企業にとって、この構想力は躍進へのヒントに満ち溢れることでしょう。
あの芳醇なスピーカーを生み出した構想力
非常にわかりやすい異業種コラボの実例としては、パイオニア時代にサントリーさんと『ピュアモルトスピーカー』という商品をプロデュースしました。サントリーさんで40~50年使用し続け、すっかりウイスキーが染み込んだ樽の木を使用したスピーカーです。樽材は樹齢100年の水楢材を使用していますが、ウイスキーを樽の中で10~15年と熟成させ、それを約半世紀の間に3回も繰り返しますと、もう香りや色等がなくなって御役御免なんですね。ただ、木材としての寿命はあと50年もあるのです。そこでウイスキー樽をスピーカーへと活用し、商品化するプロデュースに取り組みました。ヒントは有名な高級バイオリンの『ストラデバリウス』です。あれも木材を塩漬けにすることによって、中の導管が通り、あのような美しい音色が可能になるそうです。そこには樽物語というストーリーをつむぐこともできますし、元々ウイスキーと音楽は相性が良いのです(笑)。新聞発表したら、すぐに完売しました。次のヒット商品は「音楽とファッション」の相性に着目しました。ポータブルCDプレーヤーをスケルトンにして、その商品をラフォーレ原宿の全マネキン人形にたすき掛けする展示でニュースになりました。そのヒットプロジェクトには異能な人財を社内から集め、新たな生命と物語を次々に生み出し、また、企画から販売までを一気通貫することで、自分たちの新しいスタイルをそのまま顧客にお届けすることができました。
21世紀はレールなき航海の時代
20世紀は「鉄道の世紀」でした。レールがあり目的地も明確で、「改善と効率でいかにそこに早く到達できるか」を競い合っていた。つまりオペレーションとマネジメントを得意とした企業が勝つというモデルでした。それが得意な方々が現在、企業の役員です。ところが21世紀は先行きが不確実な混迷の時代です。レールがないから行く先も、道筋も分からない。言わば「航海の時代」です。私のやり方は社内の選抜メンバーにドックに入っていただいています。最初に、「私たちが将来に向けて大切にすべきなのは、一体何か?」という『錨』(本来)を明確にした上で、「この船はどの方向へと向かっていきたいのか?」目指す『北極星』(将来)を一緒に探していきます。実は、この「何が大切なのか?」を浮き彫りにするプロセスが得意なのは女性なんです。それは『こころ』を扱うからなんですね。また、良い意味で企業の固定観念に縛られていませんから。「ちょっと、ここがおかしいと思います」「こうじゃないですか?」と堂々と言えてしまう(笑)。それが強み。そのように言える環境をこちらが醸成していくのですが、メンバーの中で女性が一番スキルアップすることが多く、『場』が活性化します。だからこそ私は、経営陣の方達にあらゆるプロジェクトに、必ず女性を入れることを推奨しています。
従来のマネジメントからどうはみ出すか?
グーテンベルクの活版印刷機は、羅針盤、火薬と並んで「ルネッサンス期の世界三大発明」と呼ばれています。グーテンベルク氏の実家は刻印機を作っていたそうです。家の周囲にはワイン製造に使うぶどう搾り機がありました。そんな環境の中、ぶどう搾り機と刻印機が新しく組み合わさり、活版印刷機という化合物ができました。そのような意味で、何かと何かをつなげるアイディア、ヒット商品、新事業とは、すべて既存のモノ、コトの組み合わせです。イノベーションという言葉を提唱したシュンペーターは、それを『新結合』と呼びました。前述のヒット商品『ピュアモルトスピーカー』も新結合です。そのコツは、共通項を見出し、境界を乗り越えて新しい生命を吹き込み、そこに素敵な物語を紡ぎ出すことにあります。AI/IoTの時代、すべての製造業は今後、形を変えたサービス業へと変化すると思います。もし難しい場合は、それを専門とした企業とアライアンスをすることで道を拓くことをお薦めします。
企業へのメッセージ
もしも行き詰ったり悩んだりした時は、常識の殻を破る「三本の矢」をイメージして下さい。第一が、「私たちは一体何を大切にしていくのか?」を洞察します。事業の再定義がポイントです。これが「インサイト(深く読む)」。第二が、「世の中いったいどうなるのか?」と洞察する。それが「フォーサイト(高く読む)」。そして、第三がそれらを新結合する「ゲシュタルト(広く読む)」。この3本の矢が出揃うと新しい事業の輪郭、顧客の笑顔が見えてきます。
さて、21世紀は「イメージメント(構想)とイノベーション(革新)」が牽引する時代です。従来価値観の常識を疑い、顧客・社会を幸せにする「イメージ力」が問われます。新しい時代の本質を見抜き、次の本流をイメージして、本気(PASSION)→本質(MISSION)→本流(ACTION)の流れを創ってくれるのが「三本の矢」なんです。そして、新しい成長には、構想→行動→更新が必須です。それが私の得意とする構想力と革新力です。ぜひ、ご一緒に、隆々とした未来を創りましょう!
顧問プロフィール
元大手電機メーカー H.M様
1955(昭和30)年3月26日生まれ。東京都品川区出身。早稲田大学理工学部機械工学科卒業。1977(昭和52)年、パイオニア株式会社に入社。設計、技術企画、開発企画と歩む一方で、社長直轄・ヒット商品緊急開発プロジェクトリーダー、新事業創造室室長を歴任。更に、将来の会社の基盤となる「次の事業の柱創出」、「創造型人財創出」の両プロジェクトリーダーとして多くの実績を挙げる。同社総合研究所では、「新価値推進センター」の所長として10年後の成長シナリオをまとめ、2013年に同社を早期退職。現在は自ら代表となり「新価値創造研究所」を立ち上げる一方、様々な業種業態をご支援する個人コンサルタントとしても活動中。
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